EU商標の出願先である欧州連合知的財産庁(EUIPO)は、公式サイトの「eSearch Case Law」セクションで定期的に決定を公開しています。本記事では、EUIPOの注目すべき判断を紹介します。「ALBA RANCH」という商標は、2025年4月9日付で職権により拒絶されました。

拒絶理由は次の2点です:

1. 保護された地理的表示の含有

第一に、この商標には保護された原産地名称が含まれており(EU商標規則第7条第1項(j))、ワインを指定商品とした出願は拒絶されるべきです。「Alba」はイタリア産ワインに対する保護された地理的表示です。このような衝突は絶対的拒絶理由とされ、第三者からの異議がなくてもEUIPOが自ら審査します。本件では、「Alba(地理的表示)ワイン」のみを商品とすれば登録の可能性があるとされましたが、それは使用範囲を限定することになります。当然ながら、その場合は表示されたワインにしか商標を使用できません。しかし、出願人の意図はそうではなかったと考えられ、最終的に出願は取り下げられました。

2. EU内の代理人の不在

出願人は米国在住でありながら、EUIPOに認可された代理人を選任しなかったことも問題となりました。EU域外の個人や企業がEU商標を出願する場合、代理人の選任が必要です(EU商標規則第120条第1項)。代理人とは、弁護士やEUIPOの認定代理人(例: 弁理士)を指します。EU域内に拠点を置く者は自己出願も可能ですが、EUIPOには厳格な形式および期限の要件があるため、出願段階から専門家に依頼することが望ましいです。複雑な法的判断が関わる場合には、必ず専門家に相談することをおすすめします。

出典

eSearch Case Law – EUIPO – 欧州連合知的財産庁の判例データベース

eAmbrosia – 地理的表示のEU登録簿 – EUで保護されている地理的表示の一覧